システム老朽化の対策とは|中小企業がとれる3つの選択肢とコスト感

自社で長年運用している業務システム。「古くなっている自覚はあるけれど、まだ動いているし、全面リプレースは高額だから」と後回しにしていませんか。

システム投資は決して安いものではないため、経営判断として慎重になるのは当然のことです。ただ、現場で見ていると、「動いているから」と老朽化したシステムを放置し続けた結果、ある日突然のトラブルで事業継続が危ぶまれるケースに度々出会います。

そこで今回は、自社システムの老朽化を放置する見えないリスクと、全面リプレースの予算がなくても取れる現実的な対策、それぞれのコスト感について解説します。


老朽化した自社システムを放置する3つの「見えないコスト」

「今のシステムをそのまま使い続けること」は、一見するとコストがゼロのように思えます。しかし実際には、以下のような見えないリスクやコストが蓄積しています。

セキュリティ脆弱性と業務停止リスク

古いシステムは、現代のサイバー攻撃の標的になりやすいという弱点を持っています。システムを構築した数年前、十数年前のセキュリティ基準のまま運用を続けていると、新たに発見された脆弱性に対応できません。

ランサムウェア(身代金要求型ウイルス)などの被害は、決して大企業だけのものではありません。むしろ、セキュリティ対策が手薄になりがちな中小企業が踏み台として狙われるケースが増えています。万が一顧客情報が流出したり、システムが停止して業務が滞ったりすれば、企業の信用問題に直結します。

担当者退職によるブラックボックス化(属人化の限界)

「このシステムの面倒みれるのはAさんだけ」といった状態になっていないでしょうか。長年同じシステムを運用していると、度重なるツギハギの改修により、内部の構造が複雑化していきます。

仕様書や設計書が十分にない状態で、そのシステムを唯一理解している担当者が退職や休職をしてしまった場合、システムは完全なブラックボックスと化します。ちょっとした設定変更すらできなくなり、エラーが起きても原因調査に膨大な時間がかかるようになります。

非効率な運用をカバーし続ける人件費の増大

事業環境が変化しているにもかかわらずシステムが古いままだと、システムで対応できない部分を「人間の手作業」でカバーすることになります。

データを一度CSVで出力してExcelで加工したり、複数のシステムに同じ情報を二重入力したりといった作業は、典型的な運用カバーです。こうした非効率な作業に社員の時間を奪われ続けることは、長期的に見れば莫大な人件費の無駄遣い(見えないコスト)と言えます。

ここまで挙げた3つの見えないコストは、国レベルでも以前から警告されてきた問題です。経済産業省は2018年9月7日公表の「DXレポート」で、いわゆる「2025年の崖」を提示し、レガシーシステムの残存を放置した場合、2025年以降に最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性を指摘しています(出典: 経済産業省『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』2018年9月7日、参照時点 2026年6月)。続く2022年7月7日公表の「DXレポート2.2」では、デジタル産業への変革に向けた個別アクションが整理されています(出典: 経済産業省『DXレポート2.2』2022年7月7日、参照時点 2026年6月)。自社のシステムは個別の問題に見えますが、同じ構造の困りごとを多くの中小企業が抱えている、ということです。

放置のリスクを別角度から整理した記事として、中小企業がシステム保守を後回しにできない3つの理由 もあわせてどうぞ。


自社システムの老朽化を判断するチェックポイント

自社のシステムが本当に「老朽化」のフェーズにあるのか、客観的に判断するためのチェックポイントを挙げます。以下のいずれかに該当する場合は、早急な対策の検討をおすすめします。

サーバーOSやプログラミング言語のサポート(EOL)が切れている

システムを動かしている土台(サーバーのOSや、PHPなどのプログラミング言語)には、提供元によるサポート期限が設定されています。

補足:EOL(End of Life)とは、製品のサポート終了を指すIT用語です。EOLを迎えると、致命的なセキュリティの欠陥が見つかっても修正プログラム(パッチ)が提供されなくなります。

関連語にEOSL(Extended End of Service Life/延長サポートも含めた完全終了)もあり、有償の延長サポートすら終わった「完全なサポート切れ」を指します。

Windows Server 2012や、古いバージョンのPHPなどで稼働しているシステムは、EOLを過ぎ、EOSL(延長サポートも含めた完全終了)が間近のものもあります。サポート切れの土台の上で動いているシステムは、すでに危険な状態にあります。

当時の開発会社が廃業・撤退、または担当者が不在

システムを開発してくれた開発会社がすでに廃業してしまったり、当時の担当エンジニアが辞めてしまい、連絡がつかなくなっているケースです。保守をしてくれる存在がいない状態は非常にリスクが高いと言えます。

障害が起きたら誰に頼めばいいか分からない状態になっている

「もし今、システムが動かなくなったら誰に電話をするか」が社内で明確になっていない場合、それは「動いているから触らないようにしている」だけの状態です。いざという時の初動が遅れ、長期間の業務停止に繋がる恐れがあります。


システム老朽化に対する3つの対策とコスト感

では、老朽化に対する具体的な対策としてどのような選択肢があるのでしょうか。代表的な3つのアプローチと、それぞれのコスト感をご紹介します。3つの選択肢の比較や判断軸を深掘りした古いシステムの作り直しは正解?3つの選択肢と判断基準では、判断フローもあわせて整理しています。

対策1:全面リプレース(新規システム開発)

現在の業務フローに合わせて、最新の技術でシステムをゼロから作り直すアプローチです。

機能の刷新や操作性の向上など最大のメリットが得られますが、数百万〜数千万円規模の予算と、半年以上の開発期間が必要になります。「予算と時間に余裕があり、根本的に業務を改革したい」という企業向けの選択肢です。

対策2:既存SaaS・パッケージシステムへの乗り換え

自社専用のシステムを諦め、市販のクラウドサービス(SaaS)やパッケージソフトに乗り換えるアプローチです。

初期費用を抑えられ、保守の心配もなくなります。しかし、「自社の特殊な業務フローを、システムの標準機能に合わせる」という現場の業務改革が必要になります。これが現場の反発を招き、導入に失敗するケースも少なくありません。

対策3:保守の引き継ぎと部分改修(第3の選択肢)

「全面リプレースの予算はないが、SaaSにも業務を合わせられない」という中小企業にとって、最も現実的なのがこのアプローチです。

現状のシステムを捨てず、別の開発会社に保守を引き継いでもらいます。その上で、セキュリティ的に危険な部分や、業務のボトルネックになっている部分だけをピンポイントで改修していきます。これなら、初期の予算を抑えつつ、漸進的にシステムを健全化していくことが可能です。

ここで意識したいのが、ベンダーロックインから抜けられるかどうかです。今の開発会社しか中身を知らない状態が続くほど、見積もりの妥当性も判断できず、料金交渉の余地も狭まっていきます。別の会社に保守を引き継ぐ過程で、ソースコードや設定情報を引き出し、ドキュメントを最低限の形で整え直しておく。そうすれば将来「ここは別の会社に頼む」「ここは内製でやる」といった選択肢が持てます。ベンダーロックインを少しずつほどく作業も、部分改修の大事な役目です。

保守費用の内訳や相場感、契約形態の見直しの観点は、保守費が妥当か分からない業務システム――内訳・相場・打ち手の順で見直すに詳しくまとめました。

最近は、保守の料金を月額固定ではなく**実働ベース(従量課金)**で持つ会社も出てきました。実際に動いた時間に対してだけ請求する形なので、使わない月の固定費が発生せず、部分改修と相性のいい持ち方です。


予算に限りがある中小企業のための現実的な進め方

弊社の経験では、多くの中小企業にとって「対策3(保守の引き継ぎと部分改修)」が最も費用対効果が高く、現場の混乱も少ない進め方だと感じています。具体的には以下のようなステップで進めます。

全面リプレースを急がず、まずは「ソースコードの現状診断」から始める

まずはシステムの中身(ソースコード)やサーバーの稼働状況を専門のエンジニアに読み解いてもらい、現状の健康診断を行います。

仕様書が残っていなくても、プロのエンジニアであればコードからシステムの構造を把握することは可能です。どこが危険で、どこが安全なのかを可視化することで、過剰な投資を防ぐことができます。

優先度の高い不具合やセキュリティ対応から段階的に改修する

診断結果をもとに、優先順位をつけて改修を行います。

例えば、「まずはサポートが切れているサーバー環境の移行だけを行う」「次に、現場から一番クレームが出ている検索機能の遅さを改善する」といった具合です。一度にすべてを新しくするのではなく、月々の予算の範囲内で少しずつシステムを蘇らせていきます。


まとめ

自社システムの老朽化は、放置すればするほどセキュリティリスクや属人化の問題が膨らんでいきます。しかし、「システムが古い=数千万円かけて全面リプレースしなければならない」と決まっているわけではありません。

今のシステムを活かしたまま、保守を引き継ぎ、段階的に改修していくという選択肢もあります。

動かしているシステムの将来に不安をお持ちの場合は、まずは状況のご相談からでもお気軽にお問い合わせください。弊社のシステムレスキューは月額固定ではなく、実際に動いた分だけ請求する実働ベース(従量課金)の保守です。使わない月は費用が発生しません。

システムレスキュー

開発会社が廃業した、担当者が退職した、仕様書が残っていない。そんな業務システムを引き取り、保守・改修を継続します

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