古いシステムの作り直しは正解?3つの選択肢と判断基準
目次
「動いてはいるけれど、もう何年も中身を触っていない」。 長く使ってきた業務システムについて、こう感じている方は多いはずです。
開発を頼んでいた会社との付き合いが切れた。当時の担当者が辞めた。仕様書も見当たらない。 それでも日々の業務は回るため、つい後回しになります。
ただ、いざ「そろそろ作り直すか」と考え始めたとき、全面的なリプレース(作り替え)が唯一の正解とは限りません。 古いシステムへの向き合い方には、状況に応じた複数の選択肢があります。 まずは「放置」という現状を直視するところから始めます。
「触らない」も判断の一つ。ただしリスクは静かに積み上がる
「動いているのだから、わざわざ触らない」。 これも立派な経営判断です。短期的には追加のコストもかかりません。
問題は放置している間に、見えないところでリスクが増えていく点です。 古い技術で組まれたシステムは、保守できる人材が年々減っていきます。 障害が起きてから慌てて探しても、もう対応できる人がいないという事態になりがちです。
この構造は、国レベルでも以前から警告されてきました。 経済産業省が2018年に公表した「DXレポート」は、いわゆる「2025年の崖」を提示しています。 レガシーシステムの刷新が進まなければ、2025年から2030年にかけて、最大で年間12兆円の経済損失が生じうるという指摘でした。 同レポートでは、21年以上稼働する基幹系システムが2025年には約6割を占めること、IT人材の不足が約43万人まで広がることも示されています。
では、2025年を過ぎたいまはどうなったのでしょうか。 経産省・デジタル庁・IPAが2025年5月にまとめた「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」が、その後を伝えています。 2024年末から2025年初頭にかけての市場調査では、運用や保守が難しくDXを妨げるレガシーシステムが、ユーザー企業の61%に残っていました。 崖は乗り越えられたというより、多くの企業が崖の上で立ち止まったまま、という状況に近いといえます。
古いシステムへの対処は、大きく3つに分かれます
放置のリスクを踏まえたうえで何ができるのか。 古いシステムへの対処は、大きく3つの方向に整理できます。 全面的に作り直す、別のサービスに乗り換える、今のものを活かして直す、の3つです。 まずは全体像を表で押さえます。
| 選択肢 | 概要 | 費用感 | 期間の目安 | 向いている状況 | 主なリスク・注意点 |
|---|---|---|---|---|---|
| 全面作り直し | ゼロから新しく開発し直す | 高 | 長(半年〜数年) | 業務が根本から変わった、独自性が競争力の源泉 | プロジェクト自体が頓挫しやすい |
| SaaS・パッケージへ乗り換え | 既製のサービスへ移行する | 低〜中 | 短〜中(数週間〜数カ月) | 会計・人事などの独自性が不要な業務 | 業務をシステム側に合わせる必要がある |
| 段階的改修(保守の引き継ぎ) | 現状を活かし優先度順に直す | 低〜中 | 短〜中 | 正しく動いており全面刷新の予算はない | 古い構造(技術的負債)が一部残る |
費用感と期間は、システムの規模や複雑さで大きく変わります。 ここでは相対的な目安として捉えてください。 それぞれがどんなケースに向くのか、順に見ていきます。
選択肢1 ゼロから作り直すのが最善になるとき
最初の選択肢は、リプレースです。 これが最善になるのは、主に次のような場合です。
- ビジネスモデルや業務フローが、当時とは根本的に変わった
- その業務こそが競争力の源泉で、既製のパッケージでは到底まかなえない
業務そのものが変質しているなら、古い器に手を入れ続けても限界があります。 新しい設計でゼロから組み直すほうが、結果的に身軽になることもあります。 こうした抜本的な作り直しは、弊社のWebシステム開発でも承っている領域です。
「高い」だけではない。作り直しは頓挫しやすい
ただし、リプレースには見落とされがちなリスクがあります。 費用が高いことだけではありません。プロジェクト自体が途中で崩れやすいのです。
日経コンピュータが2018年に実施した「ITプロジェクト実態調査」では、システムの導入や刷新を行った1745件のうち、47.2%が「失敗」と判定されました。 ここでの成功とは、スケジュール・コスト・満足度の3つをすべて満たしたものを指します。 半数近くが、納期の遅れか予算の超過、あるいは現場の不満を抱えた計算になります。
現場で見ていても、要件が固まらないまま走り出した作り直しほど、迷走しやすいと感じています。 全面刷新は効果が大きい反面、相応の覚悟と社内体制が要る選択だといえます。
選択肢2 SaaSやパッケージへ乗り換えるとき
2つ目は、自社専用の開発をやめ、既製のSaaSやパッケージへ移る選択です。 次のような場合に向いています。
- 会計や人事など、自社の独自性がそれほど必要でないバックオフィス業務
- その業界に特化した、完成度の高いSaaSがすでに存在する
- 業務の進め方をシステム側に合わせる(標準化する)覚悟がある
乗り換えの利点は、自前で開発を抱えずに済み、保守やアップデートを提供側に任せられる点です。 一方で、自社の独自ルールを手放し、システムの作法に合わせる判断も必要になります。
選択肢3 今のシステムを活かして直すとき
3つ目は、既存システムを土台のまま、段階的に改修していく選択です。 現場では、これが現実解になるケースが最も多いと感じています。 次のような状況が当てはまります。
- 独自の業務ロジックが複雑に組み込まれ、いまも「正しく動いている」
- 当時の担当者も仕様書もないが、全面刷新するほどの予算はない
- まずはセキュリティやサポート切れ(EOL)だけを早急に解決したい
特に見過ごせないのが、サポートが切れた環境のセキュリティリスクです。
サポートが終了したOSやソフトは、新たな脆弱性が見つかっても修正プログラムが提供されません。「動いているから」と放置された環境が、攻撃の侵入口になる例は珍しくありません。
IPAが2026年1月に公表した「情報セキュリティ10大脅威 2026」でも、組織向けの脅威はランサム攻撃が1位、サプライチェーンや委託先を狙った攻撃が2位でした。 古い環境を抱えたまま取引先とつながっていると、自社が侵入口になりかねません。
全面作り直しは難しくても、危ないところから順に手当てしていく道はあります。 こうした「動いているが、誰も触れなくなった」システムを引き取り、診断から保守まで継続するのが、弊社のシステムレスキューの役割です。
最適な選択肢を見極める第一歩は、現状の可視化です
3つの選択肢のどれが正解かは、今のシステムが置かれた状況によって変わります。 ここで避けたいのは状況を把握せずに、いきなり開発会社へ見積もりを依頼することです。 土台が見えていなければ、提案の良し悪しも判断できません。
判断の出発点になるのは、現状の「仕様」と「健康状態」を可視化することです。 何がどう動いていて、どこにリスクが潜んでいるのか。 ここが見えて初めて、3つの選択肢を同じ土俵で比べられます。
可視化の効果は、データにも表れています。 先の「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」では、経営層と情報システム部門の間で課題を共有できている企業ほど、システムの可視化やモダン化が進む傾向が示されました。 情報共有ができている企業では71%が仕様を可視化できていた一方、共有がない企業では66%が可視化できていなかったと報告されています。 現状を見えるようにすることが、次の一手の精度を左右するといえます。
まとめ
古いシステムからの改善は、全面的なリプレースだけが答えではありません。 作り直す、乗り換える、活かして直す。状況によって最適解は変わります。
そして、どの選択肢を選ぶにしても、出発点は同じです。 今のシステムが何をしていて、どこにリスクがあるのかを、まず見えるようにすること。 ここがあいまいなまま走り出すと、選択そのものを誤りやすくなります。
もし、システムがブラックボックス化していて判断がつかない場合は、現状を見えるようにするところからお手伝いできます。 作り直すべきか、活かすべきか。その診断からご相談いただけます。
システムレスキュー
開発会社が廃業した、担当者が退職した、仕様書が残っていない。そんな業務システムを引き取り、保守・改修を継続します
/service/system-rescue/
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