社内SEが退職したら?システム保守を任せる開発会社の選び方

社内のITや独自の業務システムを1人で支えていた社内SE、いわゆる「ひとり情シス」が退職する。中小企業ではめずらしくない出来事です。技術の中身が分からない経営者さまにとって、これは日々の業務が止まりかねない局面でもあります。

トラブルが起きたとき誰に連絡すればいいのか分からない。次に何かあったら対応できる人が社内にいない。そうした不安を抱えているご担当者さまは少なくないと思います。

社内SEが抜けたあと、会社が取れる現実的な選択肢は3つに整理できます。それぞれの中身と、後任として業務システムの保守を任せる開発会社をどう選ぶか。順に見ていきます。


社内SEが退職した後の3つの選択肢

社内SEがいなくなったとき、経営者が取れる選択肢は大きく分けて3つです。それぞれの難易度と会社が抱えるリスクを把握するところから始めます。

後任の社内SEを採用する

求人や人材紹介を使って、新しい社内SEを中途採用する。一見もっとも素直な解決策ですが、いまの採用市場では難易度がかなり高い選択肢です。

中小企業のIT人材不足は年々強まっています。大企業やIT企業との採用競争もあり、応募がそもそも集まりにくい。さらに前任者のシステムがブラックボックス化していると、それを引き継いでくれる人を見つけるのは一段と難しくなります。

現状維持のまま様子を見る

「いまは動いているから、何か起きたら考えよう」と、担当者を置かずにそのまま運用するケースです。技術に詳しくない経営者さまほど、この選択をとりがちです。

ただし、これはリスクを先送りしているだけです。日々のエラー対応やセキュリティ更新が止まるため、時間が経つほど復旧が難しくなる方向に進みます。

外部の開発会社に保守を外注する

3つ目が、システム保守を専門の開発会社に委託する選択肢です。個人に依存していた運用を、組織で支える体制に切り替える方法とも言えます。

初期の調整や月々の費用は発生します。それでも属人化を解消し、安定稼働とセキュリティを両立させるという意味では、もっとも現実的な解決策だと弊社は考えています。

3つの選択肢の比較

3つの選択肢を、メリットとデメリット、現実性の観点で並べると次のようになります。

選択肢メリットデメリット現実性
後任を採用する自社専属で動いてもらえる採用コストが高く、ミスマッチも起こりやすい低い(人材難のため)
現状維持で様子見短期的な出費がない停止リスクとセキュリティ不安が残り続ける低い(先送りに過ぎない)
外部会社に外注組織で支えるため属人化を解消できる月々の費用が発生し、会社選びが必要高い(会社を選べば安定する)

なぜ採用と現状維持が難しいのか

3つの選択肢のうち、なぜ採用と現状維持が現実的でないのか。背景にあるIT業界の事情を補足します。

エンジニアは他人が作った古いシステムの保守を避けがち

IPAの「DX動向2024」では、DXを推進する人材が「大幅に不足している」と答えた企業が62.1%にのぼり、調査開始以降はじめて過半数を超えました(IPA「DX動向2024」)。人材の取り合いがこれだけ激しいなか、エンジニアが転職先に求めるのは、自分のスキルが伸びるモダンな技術環境であることが多いです。

弊社の経験では、エンジニアは「仕様書も設計書もない、他人が作った古いシステム」の保守を最も敬遠する傾向があります。どこに不具合が潜んでいるか分からないシステムを引き継ぐのは、技術的にも精神的にも負担が大きいからです。

仮にコストをかけて採用できても、入社後にシステムの実態を見て早期に辞めてしまう。そうした例は現場で珍しくありません。

動いているから触らない、が止まるときに困る

正常に動いているように見えても、裏側ではリスクが少しずつ溜まっていきます。

たとえばサーバーのOSや言語のサポート期限(EOL)が切れると、新たな脆弱性が見つかっても修正プログラムが出なくなります。サイバー攻撃やランサムウェアの標的になりやすくなり、顧客データ流出の危険も高まります。

業務データが溜まってサーバー容量が上限に達し、ある朝突然画面が開かなくなる。こうしたトラブルも起こり得ます。そのとき対応できる人が社内にいなければ、原因の特定にも時間がかかり、出荷や顧客対応が止まってしまいます。


システム保守に強い開発会社を見極める4つの基準

外注を決めたら、次の論点は「どの会社を選ぶか」です。

世の中には開発会社が数多くありますが、ゼロから作る「新規構築」が得意な会社と、他人が作ったものを維持・改修する「保守・運用」が得意な会社は、求められる力が異なります。後任にふさわしい会社を見極める基準を4つ挙げます。

仕様書がなくても引き受けてくれるか

社内SEが急に辞めるとき、仕様書や構成図、操作マニュアルがきれいに残っているケースはまれです。多くは前任者の頭の中だけに仕様があり、サーバーには動いているソースコードだけが残ります。

一般的な開発会社に相談すると、「仕様書がないと引き受けられない」「責任が持てないので1から作り直し」と断られることがあります。

そこで最初の基準として、ドキュメントがない状態からでも、ソースコードと稼働環境を読み解いて構造を把握できる解析力があるかを確認してください。

全面リプレースではなく段階的な改善を提案してくれるか

中身をよく調べないまま「設計が古いので作り直しましょう」と全面リプレースを勧めてくる会社には注意が必要です。

長期的には作り直しが必要なタイミングもあります。ただ経営者さまの本音は、「いますぐ高額な予算は出せない。まずは安全に動かし続け、必要なところだけ直したい」というのが多いのではないでしょうか。

実業務の都合に合わせて、まずは保守体制を最小限に整える。その上でリスクの高い箇所から段階的に改修していく。そうした柔軟なプランを出せる会社を選ぶべきです。

古い言語やサーバー環境に対応できるか

長く使われている社内システムは、5年前や10年前の技術のまま動いていることがよくあります。

新しい会社やスタートアップは最新技術に強くても、一世代前の言語(古いバージョンのPHPやJavaなど)やオンプレミスのサーバー環境に慣れていないことがあります。

自社のシステムがどの技術で動いているかを打ち合わせで伝え、その「古い技術」への知見とトラブル対応の実績があるかを確かめましょう。

担当者個人ではなく組織で支えてくれるか

外注しても、その会社の中で「担当エンジニア1人」だけがシステムを把握している状態なら、社内SEがいたときとリスクは変わりません。その人が抜ければ、また同じことが起きます。

現場で見ていると、外注先の担当者が変わった途端に対応が落ちるトラブルは少なくありません。

複数人でソースコードやドキュメントを共有しているか、問い合わせ窓口を常設しているか、障害時のバックアップ体制があるか。この点を確認してください。


引き継ぎ前に押さえる2つのチェックポイント

候補が見つかったら、契約と引き継ぎに進む前に、経営者さま自身で押さえておきたい点が2つあります。

いきなり長期契約せず、診断から始める

「保守が得意」と言われても、実際の技術力や対応の速さは契約してみないと分かりません。いきなり高額な月額契約を結ぶ前に、まずは「現状の診断」を単発の有償業務として依頼することをおすすめします。

サーバー環境とソースコードを解析してもらい、どこにセキュリティリスクがあるか、どのプログラムがサポート終了を迎えているか、改修の難易度はどの程度かを、レポートとして出してもらう。

この診断を挟むと、レポートの質や説明の丁寧さを直接確かめられます。自社システムの状態が文書として見えるようになるため、その後の投資判断も進めやすくなります。

最近は、月額固定で契約せず、実際に動いた時間に対してだけ請求する**実働ベース(従量課金)**で保守を持つ会社も出てきました。診断から始めて、必要なときに必要な分だけ動いてもらう形にすると、初期の負担を抑えながら相性も確かめやすくなります。月額契約と実働ベースのどちらが自社の使い方に合うかは、相手の説明の丁寧さで判断できます。

サーバーの管理者権限が手元にあるか

社内SEが退職する前、あるいは退職直後でも、サーバーやクラウド(AWS、Google Cloudなど)、ドメイン管理画面の管理者アカウント(IDと最上位パスワード)が社内に保管されているかを最優先で確認してください。

現場で見ていると、これらの権限を退職した社内SE個人しか把握しておらず、外部の会社が調査を始めようにもログインできない、という事態が起きています。

前任者と連絡が取れなくなってからでは間に合いません。マスターパスワード類の保全は、経営者が真っ先に動くべきタスクです。

退職時の引き継ぎでは、サーバー・クラウド・ドメインの管理者権限の所在を必ず文書で確認してください。ここが個人に紐づいたままだと、後任の会社が調査に入れません。


まとめ

社内SEの退職は、技術に詳しくない経営者さまにとって大きな不安です。一方で、特定の個人に依存していたシステムを、組織で支える体制に切り替えるきっかけにもなります。

採用にこだわって時間とコストをかけるより、ソースコードを読み解く解析力と段階的な提案ができる柔軟さを持った会社を選ぶ。それが、安定運用と将来の改善を両立させる近道だと考えています。要点を振り返ると、選択肢は採用・現状維持・外注の3つで現実解は外注に寄ること、会社選びは解析力・段階提案・レガシー対応・組織体制の4基準で見ること、契約前に診断と管理者権限の保全を済ませること、この3点です。

業務システムの保守や引き継ぎでお困りの方は、弊社の以下のサービスもご検討ください。月額固定ではなく、実際に動いた分だけ請求する実働ベース(従量課金)の保守です。使わない月は費用が発生しません。

システムレスキュー

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